『PHOTO ARK 動物の箱舟 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト』

パンダ・トラ・ゾウ・ライオン・ゴリラ


これらはふだん動物園で見ることができる動物だ。そのせいかあまり意識しないのだが、じつは国際自然保護連合(IUCN)が作成する絶滅のレッドリストカテゴリーにすべて該当している。


カテゴリー「CR:近絶滅種」「EN:絶滅危惧種」「VU:危急種」に分類された動植物は、特に絶滅寸前種と考えられ、哺乳類1194種、鳥類1460種、爬虫類1090種、両生類2067種、魚類2359種、無脊椎動物4553種。つまり約1万3000種の動物がこの3つに分類され、絶滅の危機にある。(2017年1月時点)

 

ニシローランドゴリラ

 

著者であり写真家のジョエル・サートレイは、ナショナル ジオグラフィックと共に「PHOTO ARK(フォト・アーク)」プロジェクトを立ち上げた。これは世界中の動物園・保護施設で飼育されている約1万2000種の動物すべてを記録する活動だ。本書では、そこから絶滅寸前の400種に絞り掲載している。

 

プロジェクトの目的はひとつ。動物の姿を記録し発表することで、絶滅危機にある動物を知ってもらうためだ。「ARK(アーク)」とは箱舟の意味であり、さながら聖書に登場するノアの箱舟のように、地上のあらゆる動物を救おうという「写真の箱舟」がコンセプトなのである。

 

 

ビーズヤモリ

ヤモリの仲間はまぶたがないため、ときどき眼球をなめてきれいにする 

 

 

クチヒゲグエノンの一亜種

親をなくしたこの2匹は野生動物救護活動家に保護された。仲がとてもよく、頻繁に体を寄せ合う

 

 

撮影方法は、白または黒の背景となる照明設備付のテントを用意し、そこに動物を連れてくるところから始まる。背景を黒または白に限定しているのは、画面に余計な要素を排除し、動物本来の表情を見てもらうための工夫だ。おかげで、どの被写体も生き生きと映っている。

 

テント内に入る動物は、小型動物であれば比較的撮影は容易になるが、身体が大きく臆病なシマウマやサイ、ゾウなどはそうもいかない。彼らの場合は後方に背景を設置し、自然光で撮影するのが良いそうだ。足元にシートを置こうとすると、とても臆病で逃げてしまうので何も設置しない。撮影後にフォトショップで床と背景を消していく。

 

地球上には約120万の動物が発見されているが、実はこの数は氷山の一角と考えられている。現在までに発見された動物の95%は無脊椎動物で、ほとんどが昆虫ということになる。魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類は合計で6万種だが、地球上では主役のように思える脊椎動物も、実は動物全体のほんの一部にすぎないのだった。

 

シロヘリミドリツノカナブン

 

キリギリスの一種。

数千個に1個の確率で色とりどりのキリギリスが孵化する。野生では派手な色のためすぐに食べられてしまうが、研究所内では安全に生存できる

 

 

ゴールデンライオンタマリン

 

知らない動物には愛着が湧かないかもしれないが、本書の写真をただ眺めるだけで、美しいもの、力のあるもの、穏やかなもの、チャーミングなものなど魅入ってしまう。そして名称の隣に記載される表記(EN=絶滅危惧種)を見ると、この動物も今世紀かぎりの滅びる運命かもしれない現実を突きつけられる。


それでも生物の存在を知ることで、絶滅の危機から守れる可能性もある。著者はまず、問題を認識することが解決への第一歩だと語る。もし絶滅危惧種について何も知識がないとしたら、本書はその意識が広がるチャンスかもしれない。

 

アメリカシロヅル

一時は20羽を下回ったが、生息地の保護と人工繁殖により絶滅をまぬがれた

 

※画像提供:日経ナショナルジオグラフィック社

 


【オススメ本】『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』現コンサルティングの終焉

筋が通った正論に対して、直観が納得しないときがある。

 

本書タイトルでいう美意識は、デザインや広告などクリエイティブに関する領域かと思われがちだが、ポイントはそこではない。

 

近年、英国ロイヤルカレッジオブアート(RCA)など世界有数の美術系大学は、フォードやビザ、製薬会社グラクソ・スミスクラインといったグローバル企業の幹部に対して美術プログラムを提供している。これらを受ける理由は、数値化が容易でなく、論理だけでは問題点がはっきりと浮かびあがらない状況について、意思決定の判断力を鍛えるためだ。

 

著者は経営戦略コンサルティングの業界で10年間働いた結果、現在に蔓延するサイエンスベースのコンサルティングは限界を迎えたと述べている。そのため本書では、抽象度の高くなりがちなアートとデザインが、ビジネスにおいてどう影響をもたらすのかを具体的なエビデンスでもって明文化されている。

 

本書いわく経営において、アートとサイエンスとクラフト(経験に基づく知識)がそれぞれ主張すると、サイエンスとクラフトが勝つ構図となっている。ビジネスにおける意思決定では、論理と直感の対決では論理が勝つからだ。そして、理性と感性においては理性が優位となる。

 

つまりサイエンスの立場でアートを批判することは容易であるが、その逆は難しいということになる。コンサルティングのマッキンゼーが画期的だったのは、それまで経験値に基づいたクラフト型の企業意識の決定権に、数字を用いたサイエンス式を導入したからだ。「なぜこうなるか」を説明できるアカウンタビリティーがサイエンスの最大の強みだったからである。

 

そして企業活動は、様々な評価指標(KPI)によって計量される。そのやり方はコストとスピード重視であり、数値で表され、他の企業もコピーが可能である。しかし、どの企業も分析重視で舵をとるあまり、結果どこも同じような解に進むコモディティ化が進んでしまった。ならば最初から問題点を解決しにいくアート・デザイン的思考が、最善の回答に近づくのではないだろうかと筆者は検証を重ねた。

 

しかし歴史を振り返れば、過去の優れた意思決定の多くは、感性や直感に基づいていることが多い。絵が描けることは、実際にビジョンが描くパフォーマンスが高いと言う統計結果があるが、そういえば20世紀において強力なリーダーシップを発揮した2人の政治家、ウィンストン・チャーチルとアドルフ・ヒトラーも絵描きだった。

 

ちなみにアーティストでない人にとってドローイングは、目に映る物事の再現または空間における外形をとらえる作業と思われがちだ。しかしドローイングは開発ツールである。即興的に構造化された思考をマッピングする方法としては最速だと実感する。

 

ユニクロにおける佐藤可士和氏や、良品計画におけるアドバイザリーボードの存在など、経営者は近年コンサルタントではなく、デザイナーやクリエイターを相談相手にしている。デザイナーは混沌とした現状を認識し、エッセンスをすくい取って、後は切り捨てることが得意だからだ。そのエッセンスは視覚的に表現すればデザインになるし、文章に表現すれば会社のコピーになる。それはもちろんビジョンや戦略にもなりうるのが容易に想像できる。

 

“芸術の役割は見えるものを表現することではなく、見えないものを見えるようにすることである”

パウル・クレー(1879-1940)

 

本書では、美意識の高い(直観力のある)人間をトップまたは決定権を有するポジションに据え、両脇をサイエンスとクラフトで固めパワーバランスを均衡させるのがよいと語る。アート/デザインの部分の直感が先行指導し、サイエンスが補強する形、つまりコンサルティングを本来の意味で利用するのだ。

 

本書では企業が論理に偏りすぎていたことに警鐘を鳴らしている。もはやマッチポンプ的コンサルティングは終焉を迎えたのかもしれない。となると生産性や効率性の状況に危機感を持つことが、問題解決への第一歩となるのではないだろうか。本書はその舵取りにおける判断材料のひとつに加えても良いだろう。


【オススメ本】龍ブーム『百龍めぐり 関東編』

 

仏像や阿修羅ブームとは一線を画す、本書は龍に特化したガイドブックである。

 

龍の彫刻は、とくに江戸期の超絶技巧による寺社装飾でモチーフにされてきた。掲載される各寺社は、所在地、最寄り駅からのアクセス、宗派、祭神、御朱印、後利益など実用的なデータだ。全国の寺社の由緒とともに、フルカラーで龍の美しい造形と歴史を堪能できる。

 

どんな龍像でも良いわけではなく、本書では都内から2時間程でたどり着くことができる関東から厳選し100寺社を紹介している。単純に龍像を鑑賞するだけでなく、解説を読むことで「学び」という観点からも付加価値がついてくる。

 


山名八幡宮/群馬県


ちなみにヨーロッパでは、『ヨハネの黙示録』の竜に表されるように、たいていドラゴン自体が悪の象徴とされるイメージだ。かたや中国をはじめ日本では、水を司ることから竜神として火災除けや雨乞いの対象として崇められてきた。漁村でも豊漁祈願の海神として広く信仰され、近年はパワースポットの主役キャラクターとして龍が脚光を浴びはじめている。

 

彫刻には木目が美しい傑作もあるが、極彩色で塗られた豪華絢爛な龍も、見る人の心を掴んで離さない。というか単純に見た目でイケている。実際にその姿は力強く、また別の角度から眺めてみると、表情まで変化し、圧倒されつつも見惚れてしまう。

 


龍口寺/神奈川県


日蓮が龍ノ口法難により斬首を免れた場所、江ノ島の龍口寺。実際に足を運ぶと、狛犬のかわり双龍が鎮座。大本堂の天井画には飛龍。向拝には巨大な親子龍が8体。それぞれの龍が睨みを利かせてくる。それにしても想像上の龍という生物が、これだけの数が具現化されていることに驚く。 

 


江島神社/神奈川県


弁財天を祭る江島神社。古来、悪事を働いていた龍は、弁財天に惚れ込み、改心してのちに結婚した伝承があり、以降はこの地を守る守護神とされた。辺津宮境内の池には、真っ白な銭洗白龍王像もあるが、実物は静寂な水の中に佇みつつも荘厳な印象。奥津宮に隣接する竜宮上の龍神も巨大で圧倒される。こうした像は、信仰の対象という側面と、美術品という側面の2つの顔があるのではないだろうか。そしてどちらか一方が存在しなかったとしたら、ここまで人を魅きつけないだろう。

 


冠稲荷神社 聖天宮天井金龍/群馬県


本書の大きさはA5サイズと持ち運びやすい。記載されている寺社も、すべて御朱印がもらえるため、「龍100匹」コンプリートを狙うのもよいかもしれない。何より、休日に散歩がてら足を運んで探索すれば、身体も使い運動不足も解消されるはず。たまには近隣の寺や神社を訪れ、静寂の中に身をおいてみるのはどうだろう。

※画像提供:日貿出版社

 

 

 

 

 



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